MARTIN D-45 PROTO・NOT FOR SALE 1968
EX+++ OHC 動画追加しました!

D-45は1933年にジーンオートリーのために特注品として制作されました。その後、アーチストのオーダーにこたえて1942年までに91本が制作され、生産終了となっていました。
マーチン社では1968年に再生産を決定、68年に67本、69年に162本が制作され1970年にモデルチェンジされます。
この再生産のD-45は現在では大変なプレミアムビンテージとして知られています。
CSN&Yの華やかな演奏で世界を魅了し、日本では加藤和彦氏が印象に残ります。その後、ガロや石川鷹彦氏をはじめトップアーチストの手には必ずと言って良いほどD-45がありました。

マーチン社では1968年にD-45を再生産するにあたって、マイクロングワース氏を迎え2本の試作品を制作したことが、マーチンヒストリーに記載されています。
マイクロングワース氏は1960年代にはテネシー州で修理工房を持つかたわら、ビンテージギター研究家、ギターコレクターとしても知られていて、あのグルーンギターのジョージグルーン氏にも影響を与えました。
特にインレイワークが得意で28モデル等をベースに、戦前の45仕様にするリペアーが人気でした。数々のアーチストがマイクロングワースの手によるカスタム45仕様のギターをオーダーしていて、インレイアーチストと呼ばれていました。
1970年代にエリッククラプトンが手にしていた000-45スタイルは中でも有名で、1950年代の000-28に45スタイルのインレイが施された楽器でした。

マーチン社はその豊富なノウハウを持つマイクロングワース氏にD-45の再生産を持ち掛け、そのままマーチン社のスタッフとして迎えました。彼はまず厳選した材で2本の試作モデルを制作します。
この2本はマーチン社のヒストリーに#232933と#236913と記載されています。
本来はマーチン社で保管され、今頃はマーチンミュージアムに展示されているであろうギターですが、その2本の行方は今まで不明でした。
10年以上前にネットで売りに出ていたとかいう噂はありましたが、実際に存在は確認されていなかったと思います。

マイクロングワース氏はその後マーチン社のカスタムショップ責任者として、D-41の制作、HD-28やMシリーズ、D-76やギターオブマンスの企画等を手掛けると同時に、マーチン社にあった古い資料をまとめて「A HISTORY」を編纂しました。
マーチン社への貢献が認められ、彼の死後にはシグネイチャーモデルも制作されています。

今回の楽器は、その幻の試作D-45のうちの1本#232933です。
この楽器の存在を知ったのは偶然で、2019年暮れに知り合いのギターコレクター氏から1968年D-45を売りに出す奴がいるけど興味はあるか?と聞かれたことが始まりです。
紹介してもらったオーナーには全く面識がありませんでしたが連絡をとって写真を送ってもらい、詳細を聞きました。高額ですので細かく聞いたうえシリアル番号の写真も送ってもらうと#232933です。チェックして、このとき初めてプロトのうちの1本だと知りましたが、本当に本物かどうか、またコンディションもどこまでオリジナル度があるのかが大変不安でした。
なにしろ全く知らない人でもあり、翌月アメリカに行く予定なので、その時に確認して買いたいからHOLDしてもらえないかと聞きましたが、すぐ払ってくれないと他に売ると言われました。
さんざん悩んだ挙句、清水の舞台からダイブする覚悟で銀行振り込みで大金を支払い、ノースキャロライナに住む友人宅に送ってもらいました。この時、真冬だったために荷物の到着が大幅に遅れて、追跡番号を確認しても動きが無く、本当にヤキモキしましたが、10日ほどで友人宅に到着しました。
友人いわく、かなり修理は必要だけどオリジナルフィニッシュ、オリジナルコンディションだよと言われ、ホッと胸を撫で下ろしました。
買い付けでアメリカに行ったときにピックアップして手持ちで持ち帰る予定で預かっていてもらいましたが、なんと出発直前にコロナの影響で出国中止。その後の状況はみなさんもご存じのようにアメリカには行けなくなりました。
ブラジリアンローズウッドのため、簡単には送れず、CITES取得も私は日本にいるためアメリカでの手続きが出来ません。
支払ってから1年半が経過して、アメリカの友人がようやくCITESの許可を取得出来て、ギターを送ってもらえることになり、経産省での手続きも済み、5月にようやく手元に届きました。
実際に手にして、状態が思った以上に良く、オリジナリティーが高かったことに安堵すると同時に、歴史的にも貴重なこんなギターを手にできたことに感動しました。
このギターがあったからこそ、あのCSN&Yの名演や加藤和彦さんの名曲が生まれ、今も世界中の人がD-45にあこがれ、演奏するようになったんですね。

トップは綺麗な木目のスプルースで、試作の2本はシトカスプルースと記載されていますが、普通のシトカよりも色ムラが無くかなり厳選されたことが伺われます。
サイド、バックはブラジリアンローズウッド、エボニー指板、エボニーブリッジです。
アバロンインレイのパターンは市販の1968年D-45とほぼ同じですが、ネックジョイント、指板サイドのインレイ幅が狭く、エンドピースの幅も狭く制作されています。内部ブレイシングパターンも同じですが、ブリッジプレイトはメイプルスモールプレイト、ブレイシングのカット形状も微妙に違っています。
ナット部幅42.8ミリ程度の太目のレギュラーグリップです。
修理箇所は、ヘッドバックボリュート部のクラック補修、ネック角度補正、サイド両側に長いクラック補修、マーチンクラック補修、トップ横のクラック補修があります。
ほかに演奏で出来たキズはそれなりにあります。

12フレット上で6弦2.3ミリ、1弦1.6ミリ程度での弦高で、サドルの高さにかなり余裕があるようセッティングしています。
芯のしっかりとしたエッジの効いた硬めのサウンドで鳴ります。高音の倍音成分が豊かで華やかでいてしっかり感のある美しいトーンで、繊細なタッチでの美しい響きから、強く弾いたときの腰のある音まで表情の豊かなサウンドです。
タイトで弾いている本人よりも前で聞くサウンドが圧倒的に良く、新品の簡単に鳴るギターに鳴れた耳には、えっ?と思うところもあるかも知れませんが、少し弾いているとこの良さがハッキリわかって来ると思います。
オリジナルスネイクヘッドブラックケース付きで、内装が少し豪華な布で仕上げられています。

MARTIN D 45 PROTO 1968 動画紹介!




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